【 た行 】
帯線~塗料組合せトラブル

(帯線)
白色腐朽菌に侵された広葉樹中によく生ずる黒色や褐色の線のこと

(垂れ)
立面や傾斜面へ塗装すると流れて下方へ移動し均一な塗装仕上がりにならないことをいいます。平面に塗った場合には端のほうへたまり凸状態になることを含みます。塗料は流動しますので一度の厚塗り、シンナーでの希釈過多、シンナー揮発の遅過ぎなどにより、液状や節状の不均一な状態になります。又、同一粘度でも垂れやすい塗料 ( 一般にクリヤー ) と垂れにくい塗料 ( 一般にエナメル ) とがあります。垂れは塗装時の膜厚に大きく左右されるので、出来る限り薄く均一に塗装するように努めます。樹脂・溶剤の選択や垂れ防止材の添加など、塗料配合によっても改善できます。

(弾性)
「弾性」とは力を加えるとひずみが生じますが、その力を除けば元の寸法に戻る性質をいいます。一般には固体について言われることが多いです。「弾性」は性質を表す語であって、それ自体は数値で表される指標ではありません。弾性の程度を表す指標としては、「弾性限界」「弾性率」等があります。「弾性限界」は力を加えることにより生じたひずみが、除けば元の寸法に戻る力の限界値です。「弾性率」は力とひずみの間の比例定数であって、「ヤング率」もその一種です。

(タンポずり)
タンポずりとは乾燥塗膜が溶剤で再溶解する塗料 (セラックニス、ニトロセルロースラッカーなど) で上塗りされた塗面を薄く希釈した塗料を含ませたタンポで、擦るように塗布して平滑に仕上げる方法です。タンポの作り方は、木綿の布に綿を包んで作ります。布は新しいものよりも、のり分のない洗濯したものが仕上がりが良いです。綿は青梅綿がよく用いられます。タンポの弾力性は塗料を含んだ時に耳たぶの柔らかさに作ります。

タンポずりの方法は一般に3~5回続けて行います。最初は円運動の「丸ずり」で凹部や木目に擦りこむように行い、仕上げは繊維方向と平行に動かす「棒ずり」で行います。タンポに含む塗料は初めは濃く、仕上げに近づくにつれてほぼ溶剤だけにしてゆきます。擦り始めは軽く除々に強く力を入れます。

(着色)
着色の行程は素地着色、道管着色、塗膜着色といった方法により行います。良い着色を行うためには次の諸条件にかなった着色剤が望ましいです。

① 耐光性に優れていること
② 表面だけでなく、木材の内部まで着色出来ること
③ 着色むらが出来ず、一様に着色出来ること
④ 着色することによって木目がいっそう美しく見え、色が生きること
⑤ 作業が容易であること
⑥ 塗料の乾燥を遅らせたり、にじみ、変色などの化学的変化を生じさせたりしないこと

着色剤は使用される色材や溶媒により、いろいろな種類があります。着色剤を色材で大別すると、染料系、顔料系、薬品となります。染料や薬品は溶液として、顔料は分散液として塗布することから、次のとおりに分解されます。

① 水を溶媒とするもの
② メタノールなどのアルコールを溶媒とするもの
③ 主としてエステル系の混合溶剤を溶媒とするもの
④ ミネラルスピリットなどの石油系溶剤を溶媒とするもの

通常、水を溶媒とするものを水性ステイン、アルコールを溶媒とするものをアルコールステイン、エステル系の混合溶剤を溶媒とするものを溶剤ステイン、石油系溶剤を溶媒とするものを油性ステインといいます。

(着色仕上げ)
着色仕上げは着色剤を塗布する仕上げをいい、その目的は次の2つに分けられます。①素材の材質感をさらに美しく表現するため、材固有の色を強調したり均一にしたりします。例えば、辺材を心材色へ、低級材を高級材色へ着色します。②天然の材色ではないですが、人工的な希望色に仕上げます。例えばパステルカラー、パールなどのような色彩効果を狙います。

塗装仕上げにおいて「着色」は繊維に染料を浸透させて染める「染色」とは異なります。染色の場合は表面から内部に向かう染料溶液の通路が確保されていなければなりませんが、木工製品の木材は乾燥材で壁孔のほとんどが閉鎖されていること、細胞配列が交差していることなどから、木材内部への染色は非常に困難です。染料溶液の浸透は主に小口面から行われ、まさ目面・板目面からはほとんど行われません。

(着色方法)
着色方法には素地着色・道管着色・塗膜着色があり、これらの着色方法を単独又は併用して着色します。

①素地着色
素地への着色には染料・顔料・薬品を用いて行います。染料を用いて素地に直接着色するものは透明度が高く、材質感が阻害されません。反面、針葉樹や柔らかい材などでは着色むらが生じやすいです。有色顔料を用いたものは木目や素地色が多少隠ぺいされ半透明仕上げとなりますが、染料に比べ耐光性が良く色あせしにくいです。薬品による着色は樹脂や材の部位によって発色が異なると共に作業が煩雑ですが、耐光性が良く透明性も高いです。

②道管着色(木目着色、目止め着色)
主に道管を着色して木目を引き出す方法で、次の2つの方法があります。・目止め剤に染料や顔料を加えたものを、道管その他の細胞組織に充填させて着色するもので、目止めと着色を同時に行います。・ポリウレタン樹脂・天然樹脂などの結合剤に着色顔料を加え、目止めを目的とするのではなく道管への着色を目的とするものです。使用する着色剤をピグメントワイピングステインをいいます。着色に当たっては素地着色よりやや濃いめの色で行うのが色彩的に馴染みが良く、木目を強調できます。

③塗膜着色
不透明塗装では各種樹脂のエナメル塗装や油性調合ペイントなどを用いて行いますが、半透明塗装における塗膜着色では、有機溶剤系の染料や顔料と透明塗料を混合したもので着色し、色むらの補正・色合いの調整、ぼかしなどの明暗をつけて色彩効果を高めます。この作業を捕色または中間着色といい、塗装工程中のどの段階で行うかで混合する塗料が異なります。下塗り後の捕色ではウッドシーラーに、中塗り後又は上塗り行程中の捕色には上塗り塗料(クリヤー、フラットクリヤー)中に着色剤を混合して行います。又、素地着色剤に少量の塗料を混合するステインシールも塗膜着色剤に分類されます。

(聴覚特性)
音波はエネルギーを持っています。音波の進行方向に垂直な単位面積を通って、単位時間に流れるエネルギーを音の強さ、単位面積に作用する平均的な力を音圧と呼びます。又、人間の感覚の心理量は刺激エネルギーの対数に比例するので、音の強さをレベル (dB) で表すことがあります。

(直交異方体)
木材のように直交する3方向で異方性を示す物体のことを言います。

(チロース)
広葉樹の心材化で道管周囲の柔細胞から壁孔を通じて道管内腔に出る細胞壁。道管の水分を停止させ気密化する働きがあります。

(潮解現象)
潮解(ちょうかい)は「物質が空気中の水(水蒸気)を取り込んで自発的に水溶液となる現象」のことです。潮解は結晶表面に微小体積の飽和水溶液があり、その飽和蒸気圧が大気中 の水蒸気圧より小さいときに起こります。例えば、粒状の塩を大気中に放置すると初めはすりガラスのようであったその粒の表面が,瞬間的につやを帯びます。これは塩が空気中の水分を吸い取って溶け,粒の表面が水溶液で覆われる現象です。白化の原因の1つは人の汗に含まれる塩分が木材表面に付き、この現象により水分を取り込むために起こります。

(継手)
工作物などの部材をジョイント (結合)する手法の総称をいいます。ギターの場合はネックとボディをジョイントする際が該当し、ダブテイルジョイント・ストレートジョイントなどの工法が使われます。

(低木)
低木は植物学の用語で、生長しても樹高が約3m以下の木のことです。広義(一般)では、丈の低い(人の背丈以下の)木を言います。さらに概ね1m以下のものを小低木(しょうていぼく)と分類する場合があります。

(鉄汚染)
鉄汚染とは乾燥木材と鉄が接触するだけでは起こらず、鉄がイオン化して水に溶け出し、フェノール成分と反応して黒色化することです。ミズナラ・クリなどは鉄汚染が起こりやすい樹脂です。鉄汚染の除去にはシュウ酸水溶液(3%程度)で漂白し、第一リン酸ナトリウム水溶液(7%程度)で再処理する方法があります。

(展色剤)
顔料を含む塗料において、顔料を分散させている液体成分をいい、油性調合ペイントにおいては油がこれに該当します。

(天然乾燥)
木材を戸外に桟積みして自然に乾燥させることを天然乾燥といいます。天然乾燥の長所と短所は次の通りです。

<長所>
① 設備費用が殆ど掛からない
② 繊維飽和点までは比較的早く乾燥できます。
③ 初期の含水率のばらつきが天然乾燥によって狭められ、以降の人工乾燥が容易になります。
<短所>
① 土地、季節の天候に左右されやすい
② 乾燥時間がコントロールできない
③ 長時間乾燥させたとしても気乾含水率以下に下げる事ができない
④ 乾燥に長時間かかります

天然乾燥の場合、乾燥時間は同一の樹種や厚さでも気象因子に強く左右され、乾燥開始後の2~3ヵ月の影響が大きいです。厚さ30mm程度の広葉樹の場合、夏季だと繊維飽和点まで1カ月程度で乾燥しますが、平均気乾含水率の15%には1年以上を要します。

(天然樹脂塗料)
天然樹脂とは樹木や虫類から分泌され、又は一度生物から分泌されたものが地中で半化石化したもの、又は化石になったものの総称です。塗料用にはセラック、繊維素、ロジン、コ―バル、ダンマル、漆などがあります。

(透過損失)
材料の遮音性能を表す数値のことで「音響透過損失」ともいいます。単位は「dB」で外側から入り込んだ音(入射音)の大きさと、材料を通って内側に入った音(透過音)の大きさとの差(音圧レベル差)で表します。透過損失は材料の質量に比例します。これを「質量則」といいます。例えば、重さが2倍になると透過損失が4~5dB大きくなり、その分だけ遮音性が高まります。

(道管)
広葉樹の水分通導を受け持つ組織で、導管が上下に長く連なったもの。木口面に表れる導管の穴のことを言います。

(道管要素)
水分の通りを効率的にするために太くなり、上下の端に開いた広葉樹特有の細胞のこと。

(透明仕上げ)
素地の木目や素地色が塗膜を通してはっきり見る事が出来る仕上げで、透明塗料を使用します。透明仕上げでは、素地の色むら・欠点・着色むらがそのまま現れます。

(透明着色仕上げ)
木工塗装は透明着色仕上げが主流で、素材の持ち味を生かした着色により、木材の美しさをさらに引き立たせます。基本的には無着色透明仕上げの工程の中に、顔料着色剤や染料着色剤を用いて着色します。着色工程は使われ方で素地着色と塗膜着色とに分けられます。着色剤を使用することで、種々の色合い・濃さ・木目の強調具合など、色彩を限りなく表現することが出来ます。木材の着色については、次のような事項が着色剤選定の目安になります。

① 着色しようとしている木材の性質
② 仕上がりの色調 (色相、濃度、明度、彩度)
③ 塗装仕上がり (深み感、ぬくもり感、快適感など)
④ 塗装工程と塗装系
⑤ 塗ろうとしている製品の用途
⑥ 塗装する方法・機器

(独立柔組織)
広葉樹の軸方向柔組織で、道管とは無関係に分布します。

(塗装環境)
塗装時や塗装後の環境は仕上がり時や仕上がり後の塗膜に影響を与えます。塗装時ではゴミ・ホコリなどによる塗膜面のざらつき、シリコーンなどの空気汚染でのはじき発生、高湿度によるかぶりなどが生じるので、適切な塗装環境が必要です。塗装後では高湿度・高温・直射日光・薬品にさらされると木材が影響を受けると共に、塗膜や着色も少なからず影響を受けるので注意が必要です。

(塗装効果)
木工塗装の塗装効果には2つの流れがあります。
① 視覚的に木材自体が優良な木目・色彩・材質感を有する材料の場合、主に防水、防汚染、寸法変化の防止などが塗装目的となり、l塗装によって木材の色彩、材質感を減少させることなく、さらに引き立たせる効果を出します。
② 視覚的に木材自体が不良の場合は着色、目止め、漂白などの技法を用い塗装により表面効果を向上させ優良材に近づくような効果を出します。

どちらにしても塗装効果を十分にするためには、塗装前に次の条項をチェックします。
① 目的に合った着色剤、塗料等の選択と塗装方法
② 適切な塗装工程の組み合わせ
③ 塗装環境、乾燥条件、膜厚、塗り間隔、安全衛生などの作業管理

(塗装工程)
通常、塗料を単に1回塗るだけでは塗装目的を達成することが困難なので、下塗り・中塗り・上塗りと2回以上塗装されます。下塗り塗料を中塗り塗料と間違って塗る順序を誤ったり、乾燥しすぎてから上塗りすると、ふくれ・剥離などの欠陥が発生しやすいです。塗膜の寿命を著しく短縮する場合もありますので、塗装法の確立は重要です。

木工塗装は素地調整→着色→目止め→下塗り→中塗り→上塗りの順に行い、その他必要に応じて漂白・補色・塗膜研磨、磨き仕上げを行います。実際の塗装では仕上げ方法・経済性などの点で、全行程が行われる訳ではなく、被塗物に応じた行程の選択が行なわれます。

(塗装仕上げ)
塗装仕上げには下記の通り多様な仕上げ方があり、目的とする塗装効果を得るために、これらの仕上げを複数採用している場合が多いです。光沢度が着色に及ぼす影響、塗料が着色に及ぼす影響など組み合わせにより相互に影響を受け仕上がり外観や耐久性などがことなります。

① 素地の明瞭度
透明仕上げ(クリアー仕上げ)、半透明仕上げ、不透明仕上げ(エナメル仕上げ)
② 塗膜の形成状態
塗料浸透仕上げ(マイクロフィニッシュ)、オープンポア仕上げ(目はじき仕上げ)、セミオープンポア仕上げ、クローズポア仕上げ(目詰め仕上げ)、ミラースムース仕上げ(鏡面平滑仕上げ)
③ 着色の有無
生地仕上げ、着色仕上げ
④ 塗料の光沢度
つや消し仕上げ、つや出し仕上げ
⑤ 上塗り塗料の種類
ラッカー仕上げ、ウレタン仕上げ、アルキド仕上げ、UV仕上げ、ワックス仕上げ、その他の塗料に依る仕上げ

(塗装の欠陥)
塗料は塗装することで被塗物に付着し、塗膜となってから目的を達成しますが、塗膜になる過程でしばしば欠陥を生じる事があります。これら欠陥の原因となるものは素材の種類・塗料の扱い方・塗装の仕方・塗装環境・乾燥条件・塗装仕上がり後の状況など、多くの要因が重なって一つの問題につながっています。予測できるものは事前に改善すれば問題防止が出来、欠陥の兆候があれば即時に対処することで切り抜けられます。原因がわかれば必然的に対策が決まるので、早く欠陥に対する原因を把握することが重要です。

(塗装ブース)
室内で塗装を行う場合は、スプレー塗装で霧状となった塗料が充満したり、じんあいが浮かんでいたりすると安全衛生上有害です。又、火災発生の原因となるので、ミスト捕集装置、排気装置を設けなければなりません。特に排気装置は有機溶剤中毒予防規制上からも、是非設ける必要があります。これらの装置は一般に塗装ブースと呼ばれ、その種類には次のようなものがあります。

① 乾式ブース バッフルプレート式、フィルター式
②湿式ブース 水洗式、渦流式、オイルフェンス式

(塗装方法の分類)
塗装とは「塗料容器に入っている塗料を何らかの方法を用いて、塗ろうとしているもの (被塗物) の表面へ移行させること」をいい、その方法を大別しますと、

① 塗料をそのままの状態で被塗物へ移行する方法
② 塗料を一度霧状にして移行する方法

に分かれます。前者には「ハケ塗り」「ローラー塗り」などがあり、後者には「エアスプレー塗装」「エアレススプレー塗装」などがあります。これらの方法は長所・短所があり、塗装目的や使用塗料、被塗物の形状や大きさに依って使い分けます。

(塗装目的)
塗装の大きな目的は金属・建築・木工に限らず次の2点に集約されます。

① 素材の美化(色彩・光沢・平滑性・好感触性など)
② 素材の保護(狂いや割れの防止・耐水性・耐不朽性など)

さらにこの2つの目的以外に防汚・防火防食などの特殊な機能を与える場合があります。木材は固有の性質があり、針葉樹・広葉樹によって性質が大きく異なり、又、同一樹種でも個体差があり同一個体であっても部位により差異があります。さらsに、合板とソリッドとも異なる性質を持ちます。これらの特性を持つ木材の塗装は次の点が特徴となります。

① 木材固有の素地面をより良く生かした透明塗装仕上げが主流となる
② 被塗物である木材の種類が非常に多く、これらを同一素材として扱えない
③ 被塗物の木材表面は多孔質であり微細な部分でも化学的清浄が異なる事
④ 木材内部は常態では常に水分を持ち、水分による膨張・収縮を繰り返すこと

木工塗装ではこれらを考慮して塗装目的を果たす必要があります。

(塗膜形成)
塗膜の出来方には塗料を木材内部に浸透させて仕上げる塗料浸透仕上げから、塗料や目止め剤等で木材の微細な穴を埋めて完全表面膜とするクローズポア仕上げ、ミラースムーズ仕上げまで5つの仕上げ方に分類されます。

① 塗料浸透仕上げ(マイクロフィニッシュ)
表面に塗膜を作らず、木材内部に塗料が浸透した仕上げ
② オープンポア仕上げ(目はじき仕上げ)
塗装面で木材の道管がはっきりと鋭角に開いた仕上げ
③ セミオープンポア仕上げ(準目はじき仕上げ)
オープンポアとクローズポアの中間的な状態の仕上げ
④ クローズポア仕上げ(目詰め仕上げ)
塗装面の木材道管やその他の穴が塗料や目止め剤により埋められた平滑な仕上げ
⑤ ミラースムース仕上げ(鏡面仕上げ)
鏡の面のように平らで光沢のある状態

(塗膜研磨)
塗膜の研磨は全工程に要する時間からみますと半分以上を占める作業量となります。作業そのものは簡単なので軽視されがちですが、塗膜研磨の良否は仕上がりに直接影響しますので大切な作業です。塗膜研磨の目的は次の通りです。

① 表面の凹凸をならし平滑にする
② 活性な表面をつくり上塗り塗料の密着性を向上させる

研磨は塗膜が乾燥した後、研磨紙やスチールウールにより行いますが、スチールウールによる兼までは平滑な塗面が得にくいです。研磨紙の粒度は塗膜の硬さやどの段階の塗料研磨を行うかで選択し、深い研ぎ足が残らないように繊維方向と平行に軽く研磨することが重要です。オープンポア仕上げやセミオープンポア仕上げでは、道管の周囲が鋭角になるように研磨します。クローズポア仕上げやミラースムース仕上げでは、研磨紙の目詰まりを防ぎ、切れがよい状態で研磨するために、水、石鹸水などをつけながら行います。研磨粉が残ると上塗り塗膜との付着が悪くなり、研磨粉がが粋の湿気を吸い塗膜のふくれを生じる恐れがありますので、極細繊維を用いた除塵布、エアガンなどで完全に取り除きます。

(塗膜光沢度)
塗膜の光沢度は光を正反射する程度をいい、正反射の鉱量が多いほど光沢度が高くなります。一般に光沢土が高い仕上げを高光沢仕上げ、つや出し仕上げ又は磨き仕上げといいます。光沢を抑えた仕上げをつや消し仕上げといいます。高い光沢度が得られる塗料は不飽和ポリエステル樹脂塗料、ポリウレタン樹脂塗料、油性塗料、UV硬化形塗料ですが、ニトロセルロースラッカーはコンパウンド・ワックス仕上げによる磨き仕上げで容易に高い光沢度が得られます。

光沢度が製品の仕上がり外観に与える影響は大きく、製品に合った光沢度が求められます。同一着色であっても、光沢度が低下するに従って明度が上昇し、彩度は逆に低下します。又、光沢度が増すに従って塗膜のほこり、きず、うねりなどが目立ちやすくなると共に、道管の凹凸が明瞭になります。オープンポア仕上げや針葉樹への塗装では、光沢度をある程度抑えたつや消し仕上げのほうが仕上がりが良いです。又、広い面積を有する塗装ではつやを抑えた仕上げのほうが落ち着いた感じになります。つやを消して仕上げる方法には、次の2通りがあります。

① つや消し剤を添加したつや消し塗料(フラット)で上塗りします。光沢度はつや消し剤の添加量で調整します。
② つや有塗料(クリヤ―)で上塗りされた塗膜を、スチールウールなどで磨いて仕上げます。

つやの程度は全つや消しからつや有りまで各段階に分かれ、つやの程度は5分つや、7分つやなどといいますが、つや消し塗料は表面層に粒子が多くなるため塗膜の耐久性に欠けます。

(塗膜割れ)
塗膜にヒビ割れ、亀裂などが生じ、均一な皮膜が部分的な切断状態になることをいいます。浅いものや深いもの、大きいものや小さいもの、方向性のあるもの、木の枝のようなものなど、不規則に現れることが多いです。ニトロセルロースラッカーでは塗膜の劣化、不飽和ポリエステル樹脂塗料では極端な厚塗りが原因になることが多いです。塗膜は素地に付着しているので、塗膜自体が縮まろうとすると塗膜は引っ張られます。この引っ張り力が塗膜の破壊強さ以上になると塗膜は割れます。

(ドライスプレー)
スプレーガンで霧化された塗料が被塗物へ到達するまでに半乾燥又は乾燥粒子となって塗られることをいいます。塗肌が悪くなったり、ざらついた表面仕上がりとなります。多面体の一面を塗っていて、その面がよくても他の面に半乾燥粒子が付着して仕上がりを悪くする場合もあります。

(ドライングセット)
ドライングセットとは木材を蒸気式の乾燥機で人工乾燥する際に表面割れを抑制する方法として開発された乾燥方法の一つで、「高温セット法」とも呼ばれます。木材は自然環境で乾燥する場合、表面に乾燥割れが発生するのが普通ですが、見掛けを重視する現代においては、木材製品表面の乾燥割れは欠点として判断されます。(本当は欠点ではなく、乾燥に伴い自然に起こる当然の現象です。)人工乾燥の普及と共にこの表面割れを抑制する方法として蒸気式の乾燥方法で開発されたのが「ドライングセット」です。

「ドライングセット」は飽和蒸気で木材を蒸して細胞を柔らかくしたあと、120℃程度の高温低湿条件で表面だけを急激に乾かす処理を行います。高温で柔らかく伸びた木材表面を乾燥させ木材表面に割れが発生しにくい状態で固定化します。この後に全体の含水率を下げるために木材内部までの乾燥を促してゆきますが、蒸気式の乾燥機の場合、注意して乾燥を行わないと内部割れの発生率が高まります。また、目には見えない乾燥内部応力が発生します。

(塗料)
塗装を行う際の材料となるものが塗料で、塗料はどんな形状の被塗物も被覆しなければなならないので、
① 均一に塗り拡げられること
② 速やかに乾燥硬化すること
が必要条件となります。その他塗料・塗膜に対する要求性質は多岐にわたっています。塗膜は常に外的環境にさらされ、素材の保護と美化以外に各種用途に応じた機能を発揮しなければなりません。

(塗料の色)
透明塗装では木材特有の色と材質感、特に材質感を強調する塗料が要求されますが、不透明塗装では塗料の色を選択することが重要となります。不透明塗装に使用する着色塗料(有色塗料の各種樹脂エナメル塗料や油性調合ペイントは、透明塗料に顔料を練り合わせたものであり、塗料の色は顔料の色と共に、展色剤である透明塗料自身の色で決まります。一般に彩度の高い色、明度の高い色はアクリル樹脂塗料で、油性塗料では沈んだ色調となります。これは塗料の透明度に起因します。透明塗装の場合、透明塗料の素地又は着色素地への発色にはぬれ色が加わります。ぬれ色が加わると色調は濃くなります。ぬれ色を抑えるには素地に達する可視光の割合を小さくし散乱光を多くすれば良いので、塗料中に板上粒子(マイカなど)や透明微粒子(硫酸バリウムなど)を添加すると効果があります。

又、一般に有機化合物である塗膜は経時により変色します。例えばポリウレタン樹脂塗料には黄変(色やけ)するものもありますし、漆は透明度を増してゆきます。

(塗料別組合せトラブル)
① ニトロセルロースラッカー
上塗りに酸硬化アミノアルキド樹脂、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂を塗り重ねると、付着不良やちぢみが生じます。
② セラックニス
ラッカーや油性ワニスはセラックニスの上に付着しますが、酸硬化アミノアルキド樹脂、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂では付着不良が生じます。オイルステインの上に塗る場合はよく乾燥させてから塗らないと白ボケ(付着不良)の原因となります。
③ 油性ワニス
油性ワニスは硬化乾燥が遅く、上塗りの他の塗料が先に乾燥し、その後にゆっくり乾くので、除々に塗膜間の接触面でずれを生じて付着不良、白化などが生じやすいです。