リペア実績 #0156

Yamaha L-15

ネックリセット 象牙サドル・ナット・ブリッジピン交換 トップ膨らみ補修
千葉県

オーナーがかねてから憧れのギターを入手されまして、今回はオーバーホール的な部分とパーツのグレードアップを依頼されました。ほぼ完全な形で蘇り、さらにグレードアップしたギターとなりました。まずは、塗装クラックのタッチアップを行います。縦にクラックが入っているのが確認できます。

ウレタン塗装ですので、瞬間接着剤を使用しタッチアップしてゆきます。表面に瞬間接着剤を盛り、カミソリの刃やサンドペーパーなどで盛り上がりを平滑にします。塗装が平滑になりましたらコンパウンドで表面を磨き上げます。

次はブリッジ浮きのリペアです。浮きがごく軽度のためブリッジは剥がさず、すき間にタイトボンドを流し込んでクランプで圧着します。ブリッジ浮きリペアに引き続いてナット交換を行います。まずは元々付いているナットを外し、ナットスロットに溜まった古い接着剤を削り取ります。

象牙のブランク材で新しくナットを作成します。続いてサドルの交換を行います。元のサドルを取り外し、サドルスロットのクリーニングを行います。その後イントネーターを使ってオクターブポイントを確認します。

サドルもナットと同じく象牙材で作成します。オクターブピッチが合うようサドル山を整形します。その後表面を研磨して完了です。

次はフレットすり合わせを行います。指板にマスキングをし、すり板を使ってフレットの頂点を揃えてゆきます。クラウンファイルでフレットの形を整え、表面を鏡面に仕上げて完了です。

次にブリッジピンの交換を行いました。素材は象牙です。そのままですとピン穴に対して少し太かったため、サンドペーパーで研磨して太さを調整しました。今回は多くのリペア内容ですので、残りの部分を調整してゆきます。ナット・サドル・ブリッジピンをすべて象牙にしたことにより、作業前よりも倍音が豊かでクリアな音が出るようになったようです。象牙のブリッジピン調整を行いましたが、追加でエボニーと水牛角のブリッジピン調整もご依頼頂きました。ピン穴に対して少し太かったため、サンドペーパーで外周を削って調整しました。

ブリッジピン調整が終了し、全体的にクリーニングを行います。その他、トップの膨らみやエンドピン交換(プラスチックからエボニー白蝶貝ドット入りへ交換)も作業みです。今回は、ネック調整を当初はネックアイロンを使って処置しましたが、十分な効果が現れず、ネックリセットを実施することとなりました。

ネックリセットに取り掛かります。他のリペアを終えてからの作業となります。まずは15Fを抜き、スチーム注入用の穴を開けます。次に指板をラバーヒーターで温めて接着剤を軟化させ、ジョイント部分までボディから剥がします。

その後、ボディからネックを取り外していきます。治具を取付け、高温のスチームを指板に開けた穴からジョイント部分に注入します。指板に開けた穴からスチームを注入すること数分、無事外れました。接着面のクリーニングを行った後、しばらく乾かしておきます。

ネックの角度調整を行います。ノミややすりを使って適切な角度になるまで削ってゆきます。指板にR方向の反りが見られましたので、ヒーターと当て板をクランピングして真っ直ぐになるよう矯正させます。

ネック角度の削りを行った後、サンドペーパーでボディとの当たりを調整します。当たり面の調整後、ネックとボディを仮止めして密着度を確認します。問題ないようですのでホゾの調整に移ります。ネック角度調整によってホゾの効きが甘くなっていますので、シムを接着して密着度を高めます。

仮クランプをして密着に問題がないことを確認後、ネックの接着を行いました。数個のクランプで固定し、このまま数日間置いておきます。クランプを外してセットアップ作業に入ります。まずは外していた15フレットを打ち込みます。サドルはネックリセットに伴い、新たに作り直します。

ネックリセットに伴い、ハイフレットに高さのバラつきが発生しているためすり合わせを行います。フレットの高さを揃えたら、クラウンの整形をし、表面を磨きあげて完了です。すり合わせ後は、外していた指板エンドのバインディングを接着しておきます。

全体のクリーニングを行います。リペア前の弦高は12フレットで6弦3.0mm、1弦2.5mmでしたが、ネックリセットを行ったことにより6弦2.0mm、1弦1.5mmと大幅に低くすることができました。サドルも高さが十分にありますので、テンション感も良好です。

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