Question NO.10
漆仕上げについて教えてください

Answer
漆仕上げは素地に生漆を浸透させながら固めてゆくので、一種のマイクロフィニッシュと言えますが、オープンポアからクローズポア仕上げまで任意に仕上げる事が出来ます。広葉樹では一般に木目が埋まるまでを目標とし、完全な膜を作ります。又、生漆そのものは乳白色をしていますが、酸化すると暗褐色になるので透明性のある塗膜着色を行っていることにもなります。

漆仕上げは生漆を塗布した後、寒冷紗などの布で木材の隙間に刷り込むようにし、余分な漆を拭き取って仕上げてゆきます。この行程を木目が埋まるまで繰り返してゆきます。乾燥に関しては湿気を必要とするので、通常は加湿した部屋 ( 漆室 うるしむろ )に入れて乾燥させます。漆仕上げの一般的な行程例は

1. 素地調整
研磨紙240~320番で研磨

2. すり
生漆をテレピン油で100~200%程度に希釈し、ハケで十分に塗布して寒冷紗で刷り込みながら拭き取ります

3. 乾燥
漆室に入れて乾燥させます

4. すり重ね
生漆又はくろめ漆だけをへらで塗りつけてすり重ね、乾燥させます

漆は経時により透いてきて透明性が高くなり飴色の美しい塗膜となりますが、中には塗装直後の色合いを保つ目的で、染料で素地着色を行うこともあります。又、素地への吸い込みを抑えるために、あらかじめ柿渋やポリウレタン樹脂塗料を塗布したり、との粉・生漆・水、との粉・にかわ を混練りした目止め剤で目止めを行うこともあります。目止め剤に松煙などを加え、着色止めとすることもあります。

材質が軽い木材は漆の吸い込みが大きいので、通常のすりたては濃色となります。この場合、塗膜を一度研磨紙で剥がして吸い込みを止めれば明るく仕上げることができます。又、艶を出すために荏油などの乾性油を加えたり、朱合漆を添加する場合もあります。どの場合にしても1回ごとに十分乾燥させることが重要です。