次は弦溝の位置を決めます。弦溝の位置は、まず両端の1弦と6弦の位置を決めてから、2~4弦の位置を決めます。1弦の位置は外側にし過ぎると、弦を押さえた時にフレットから外れやすくなり、演奏に影響しますので、6弦の位置より内側に位置決めします。標準的にはナットの端から1.5mm~3mm程度のところに決めます。1弦と6弦の位置が決まったら、次に2~5弦の位置を決めます。
例えば43mのナット幅であれば、7mm間隔でマークしておき、弦の太さ分を微調整します。演奏性を考慮すれば、弦の間隔が等間隔になるように位置決めするのが良いですが、弦の太さ違いを考慮する必要が出てきます。7mm間隔均等にマークしてから、太い4~6弦の太さも考慮し0.5mm~1.0mmの調整を行います。微調整をせず7mm等間隔のマーキングで溝を掘ると、太い弦側の弦間隔が縮まって押さえにくくなります。
弦溝は指板に並行ではなく、ヤスリをヘッド側に少し向け深めに掘ります。弦がストリングポスト向けて下がる角度より、少しきつめに角度を付けて掘ります。溝の角度の付け方でも音が変わりますので注意しましょう。「弦と溝がどうのような状態で接しているか」ということが音質を左右します。弦と溝が「平面」で接するとノイジ―で太く強い音になりますし、「点」で接するとクリアーで繊細・シャープな音になります。
中央に位置する3弦と4弦は溝の方向を「ストリングポスト」に合わせます。下の画像のように溝の方向を少し外側に向けます。ペグのストリングポストに向けて溝を掘ると、弦とナットの摩擦が軽減され、チューニングが滑らかになります。
次に弦溝の深さは弦高に関わる重要なポイントです。適度な高さになるよう慎重に作業します。目安として、カッターの刃などを2フレットとナットに接するようにセットし、1フレットとの隙間がどれくらいあるかを見ます。この間隔が各弦で均一になるように弦溝の深さを調整します。1弦~3弦は深め」「4弦~6弦は浅め」で弦高がほぼ均一になるはずです。
ここでも「弦の太さ違い」が弦高に影響します。弦高は各弦均一が基本ですが、好みで1弦~3弦を4弦~6弦より僅かに下げる調整法もあります。ナットの頭は指板のアール ( カーブ ) に合わせて成形します。
今までのところで、ほぼ成形は完了します。ポイントをまとめますと、
・ナットラウンド形状 (音質)
・ナット溝間隔 (演奏性)
・ナット溝角度 (音質)
・ナット溝深さ (演奏性)
以上に注意しながらお好みのサウンドに近づけるよう調整しましょう。弦溝を掘る際には専用ヤスリが便利です。弦の太さに応じて使い分け出来るので安心の専用ヤスリです。ナットの成形が終了したら、ナットを接着剤なしで仮セットし、弦を張り状態を確認します。弦を張った時点で不具合があれば再調整します。調整が全て完了したらナット底面・横面に3滴づつ程度「瞬間接着剤」を付けて固定します。