【 さ行 】
最大含水率~速乾ニス

(最大含水率)
木材が水を含み得る最大の含水率を「最大含水率」と呼びます。その値は細胞内腔が自由水で最大限に満たされた状態です。その値は樹種などによって異なりますが,
最大含水率 = (1.5 -全乾比重)/(1.5× 全乾比重)×100 + 28 (%)
で表されます。ここで1.5 は木材の真比重,28 は繊維飽和点です。木材の比重は樹種によって異なり,それは細胞内腔による空隙率の違いによるもので,空隙を除いた木材の真比重は,一般的に針葉樹,広葉樹に関係なく1.5 とされています。この式が意味するのは,比重の小さい樹種は自由水が入る余地(空隙)が多く,その分多くの水を含むことができるということです。

(細胞壁)
細胞壁は植物細胞を取り囲むセルロースを主成分とする構造物で、木材の実質部分を言えます。細胞壁は微生物やカビなどにもありますが、ここでは植物の細胞壁についてのみ説明します。以前は、細胞壁は細胞の死んだ部分で、細胞の形を決める単なる支持構造だとみなされていました。しかし今では、細胞壁はそのような役割だけでなく、細胞の他の部分と同じように生きて、ダイナミックに活動をしており、様々な機能を遂行し、植物の生存に必要な役割を担っていることが明らかにされています。以下にその代表的な役割を説明します。

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構造的・機械的役割  
質問の中でも言われているように、細胞壁の代表的な役割は、細胞の形、大きさを決める事です。細胞が大きくなることを「細胞が成長する」と言います。細胞成長とは細胞の容積が増加することですから、細胞を囲む細胞壁がどれだけ広がるかによってそのサイズが決まります。細胞壁の広がりが縦軸方向に顕著に起れば、細長い細胞ができます。これは茎が伸長する時の細胞にみられます。

また、横軸方向に顕著に広がれば,ずんぐりむっくりの細胞ができます。「液胞」の説明のところで述べますが、植物の細胞はいつも吸水しようとしていますので、もし細胞壁がないとどんどん吸水が続き、細胞は拡大を続けて、細胞膜は内部からの圧力に耐えきれなくなり破裂してしまいます。細胞壁の存在はそれを防ぎます。植物は動物のように内部骨格や、昆虫のような外部骨格がありませんから、身体の形態的構造を維持するために、個々の細胞の細胞壁がまとまって機械的な支持構造をなしています。細胞壁は細胞成長が進むと、セルロースを主体とする一次細胞壁の外側にリグニンを主体とする二次細胞壁が合成されて、より強い堅固な構造になります。特に木本植物では、リグニン化が顕著な細胞で構成される木部組織ができて、植物体全体の固い支持構造となります。この場合、細胞は生きてはいません。

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外部からの様々な要因から細胞を守る役割  
植物は生育する場所から離れる事ができませんから、絶えず様々な外的要因にさらされており、生存や、生育に不利益なものに対抗しなければなりません。細胞壁があることによって、細胞は一寸した物理的なあるいは化学的なストレスや傷害から守られます。また、細胞壁はウィルス、細菌、カビなどの侵入を物理的に防ぎます。微生物が細胞をアタックするには、植物組織にできた傷口などから入るか、微生物が分泌する酵素で細胞壁を分解しなければなりません。

しかし、微生物が細胞に侵入を開始すると、植物はファイトアレキシンというこれらの微生物を殺す毒素を合成し、病原菌の侵入拡大を防ごうとします。ファイトアレキシンの種類は植物よって異なります。微生物が感染する時、まず細胞壁に付着します。細胞壁がそのままでは微生物は細胞の内部に侵入できませんので、まず細胞壁を分解します。この時、細胞壁の分解物(細胞壁構成成分の断片)が信号物質(エリシターといます)となって、健常な近辺の細胞に至り、そこで、ファイトアレキシンの合成が引き起こされます。また、同じく感染された植物細胞は微生物の細胞壁に働きかけて、これを分解し、その分解物がエリシターとなることもあります。このように、細胞壁は病原菌の感染の感知と侵入に対する防御において大変重要な役割を果たしています。

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水分子等の通路としての役割
植物体は根の先から葉の先まで身体全体の細胞がつながっていて、それぞれの細胞は細胞壁に囲まれ、隣り合う細胞は細胞壁がお互いにくっついています。細胞壁には原形質連絡というトンネルがあって、隣り合う細胞とは細胞質どうしもつながっています。このような植物体全体の細胞壁のネットワークを「アポプラスト」と呼び、原形質のネットワークを「シンプラスト」といいます。従って、植物体中の水やそれに溶けている低分子物質に移動する時は、必ず細胞壁を通過しなければなりません。つまり、細胞壁は細胞間の物質の輸送の通路として大切です。勿論長い距離、例えば根から茎の先端までの輸送には導管や篩管のような組織がありますが、そこに入るにもやはりまず細胞壁を通らなければなりません。

細胞壁はウィルス、微生物や大きい分子を通しません。低分子の物質でも、正(+)に荷電したものは、細胞壁構成分子が負(-)に荷電しているため、細胞壁中にトラップされ易く、通過は抑えられます。植物は根から水と一緒に各種の養分(主として無機物質)を吸収して身体全体へ輸送します。吸収された水やこれらの物質はアポプラストを通るか、あるいは一部は一旦細胞膜を通過して細胞内を経由して、根の通導組織の導管に入り上部へ輸送されます。

(材面)
木材は木取りにより3つの断面に固有の模様が現れます。樹幹の中心軸に直角に切った横断面を「木口面」、中心軸を含む縦断面(半径方向)を「まさ目面」、中心軸を通らずまさ目面に直角な縦断面(接線方向)を「板目面」と言います。木材は縦軸方向、まさ目方向、板目方向で水分による材の膨張・収縮の度合いや強度などが異なります。このような性質を「異方性」と言います。

(酢酸ビニル樹脂エマルジョン接着剤)
酢酸ビニルの重合体で微粒子のポリマーを水中に分散させたエマルジョン型接着剤です。溶剤である水が消失して被膜となります。耐水性や耐熱性が劣りますが、木工用として広く用いられています。

(残響時間)
発生した音の音圧レベルが60dB減衰するのに要する時間。

(サンダー)
サンダーには主に素地研磨に用いるベルトサンダー、ドラムサンダーがあり、塗膜研磨にはポータブルサンダーが使われます。ポータブルサンダーには研磨紙を取付ける当て板の運動方式により直線運動式、前後運動式、軌道運動式、回転運動式があります。木工塗装には前後運動式、軌道運動式が用いられ、軌道運動式は研磨効率が良くムラなく研ぐことが出来ますが、研磨面に細かい研ぎ足が出来ます。一方、前後運動式は研磨紙の横ずりがないので木工製品に適しています。いずれも深い研ぎ足を出さないようサンダーを研磨面に軽く押しつけながら行います。

(視覚特性)
木材の視覚特性としては色・反射・吸収・木目模様が重要で、色相はほとんど黄赤となります。黄赤の色相は暖かく豪華な感じになります。明度の高い木材は明るく美しく、すっきりして派手な感じが出、明度の低い木材は深みがあり重厚で落ち着きがあり、渋く豪華な感じが出ます。彩度が高い木材は派手、刺激的、豪華、彩度の低い木材は渋く重厚、深みのある落ち着いた感じが出ます。木材は紫外線を吸収し赤外線を反射します。繊維方向と繊維に直角方向に入った光の反射、散乱がまばらなため、木材特有の感じとなります。木材の色の濃淡や木目の模様は全く規則的でも不規則でもありません。

(下塗り) 一般的に、より良い仕上げにするために塗装を「下塗り」「中塗り」「上塗り」の3段階に分けて塗ってゆく行程のうち、最初に行う重要な塗りをいい、その目的は次のようなことがあります。

① 下地押さえ
木材のヤニ、着色剤のにじみ、目止め剤などを押さえます。
② 生地固め
樹脂を素地に深く浸透させ、木繊維などを固めて安定にし、耐久性を向上させます。
③ 塗膜の耐久性の向上
中塗り・上塗り塗料の素地への浸透むらを防ぎ、素地の表面を均質化して付着性を向上させます。又、弾性に富む下塗り塗料を使うことで、含水率の変動に伴う木材の寸法変化に対応出来る塗膜を作ります。下塗り塗料は素地へのぬれ、浸透性が良いことが条件となり、ニトロセルロースラッカー系、ビニル系、ポリウレタン系のウッドシーラーの他、セラックニスなどがあります。塗装方法はハケ・エアスプレーなどがあります。

木材はコンクリート・塩化ビニルのようなプラスチック・ガラス・金属に比べると、吸湿性が高く湿気を通し易い材料です。木材のような吸湿性の高い材料で囲まれた空間では、吸湿性の低い材りゅで囲まれた空間に比べて、温度変動が生じた場合の相対湿度の変動が小さくなり、湿度調節が行われます。温度が上昇して相対湿度が低下すると、材料から放質が起こり、温度が低下して相対湿度が上昇すると、材料への吸湿が起こります。

(霜割れ)
幹の中の水分が凍結し、その膨張により縦方向の割れを生じたもので、寒冷地方に生育するドロノキ、ヤチダモ、トドマツなどに多い。

(収縮)
木材の細胞壁は繊維飽和点において最大の水分を含んでいて、容積も最大となっていますが、繊維飽和点以下になると水分の蒸発と共に木材は収縮してゆきます。木材の膨張・収縮は細胞配列によって異なり、繊維方向の収縮・膨張率は小さく実用上大きな影響を与えませんが、半径方向や接線方向の収縮・膨張率は大きいので注意が必要です。一般に板目板は狂いやすく、まさ目板は狂いにくいとされています。これは製材の方向で収縮率が異なるためです。製作後に狂いが生じては困る部分にはまさ目材が多く使われるのはこのためです。

(自由水)
細胞内腔などに液状で存在する繊維飽和点以上の水分のこと

(酒精塗料)
酒精塗料は天然樹脂をアルコールに溶解して作ったワニスのことです。以前は木工用塗料として多く使われていましたが、対候性・耐水性・耐熱性などの塗膜性能が劣るため、合成樹脂塗料の出現とともに用途も限られ需要が減少しています。

(樹皮)
樹木の幹・枝・根などは形成層活動によって肥大成長しますが、このうち、形成層より外側の部分を樹皮といい、内側の部分を材(木材)と呼びます。周皮は次々と内側に新しく形成され、それ以前のものは肥大成長につれて外方に押し出されると同時に引き伸ばされ、順次はげ落ちてゆきます。いちばん内側の周皮から外側の部分はすべて死んだ組織からなり、この部分は外樹皮あるいは粗皮(あらかわ)と呼ばれます。これに対して内側の部分は内樹皮あるいは甘皮(あまかわ)と呼ばれます。

(樹木)
地面に生えている木の総称で、その高さによって高木と低木に大きく二分されます。その境になる高さの目安は人によって3メートル前後や人間の背丈くらいと言われ、区分は便宜的です。ただし、高木では一般に1本の幹がはっきりする傾向があるのに対して、低木では多幹になる傾向が強いです。

(春材)
針葉樹で春に作られる年輪の内側の軽く軟らかい部分。早材とも言います。

(白木仕上げ)
通常、木材は塗料を塗るとぬれ色になり元の材料より濃くなりますが、そうならないように作られた専用塗料を使用するか、一般の塗料でもホワイトトナーと称する白顔料ステインを使用し、塗装していないもとの白生地と同じ色に仕上げます。木材の素朴な感じを大切にするため全く塗らないと木材の色ヤケや汚れが付くので、それを防ぐために塗装します。明るく白っぽい木材の仕上げに適しています。塗料はニトロセルロースラッカーやアクリルラッカーが適しています。ポリウレタン樹脂塗料を使用する場合は黄変性の無いものを選択し、薄塗りに仕上げます。ポリエステル樹脂塗料はこの仕上げには不向きです。

(白ぼけ)
塗膜が経時により白く濁って透明性がなくなることをいいます。特にポリウレタンサンディングシーラーを一度に厚塗りしたり、乾燥が不十分なまま重ね塗りした場合に生じやすいです。塗膜の表面乾燥が先に進み、内部乾燥が遅れる事から生じます。

(シワ)
上塗り又は重ね塗りする場合、上塗りが下塗り塗膜を起こして ( リフティング ) 不規則な縮み模様が生じるような現象を、漆や油性塗料、フタル酸樹脂塗料などを厚塗りした場合、塗膜の表面層のみが乾いて皮膜になりますが、内部は乾きません。液状の内部から表層皮膜と仲の良い成分が拡散し、表層皮膜を膨潤させる現象とに代表されます。シワは橋かけ形の下塗り塗料が乾燥過程にある時、溶解力の強い溶剤 ( 強溶剤 ) や揮発の遅い溶剤 ( ノンブラッシングシンナー ) を入れ過ぎて重ね塗りした時に生じやすいです。

(人工乾燥)
人工乾燥とは強制的に木材を乾燥させることで、次のような長所があります。

①木材を比較的短時間に乾燥できる。
②温湿度を調節することにより割れ等の乾燥障害を防止出来る
③気乾含水率以下の任意の含水率にまで乾燥できる

乾燥のスケジュールは樹種の特性と使用目的に合わせ、乾燥による障害をできるだけ抑えながら早く乾燥させるように立てます。一般に広葉樹を乾燥させるには、乾燥による障害を防ぐために温度を低くし、湿度を高くして行います。一方針葉樹は広葉樹より乾燥による障害が発生しにくいため、比較的高い温度から始めます。また乾燥の途中でその状況を調べながら行います。通常は乾燥する板の中から節等の欠点がない板をサンプルボードとして含水率を測定し、乾燥経過をたどります。又、生材からの人工乾燥は長期間掛かる事、表面硬化が生じやすいことから、人工乾燥の前処理として最低3ヵ月程度は天然乾燥を行います。

(心材)
材の心材部分の別称で辺材に比べ赤みを帯びているためにこう呼ばれます。 樹脂が多く水分が少なく、強度・耐久性に優れています。木部の中で中央に近い着色した部分。生存細胞を含まず耐久性に富みます。辺材の対語です。

(針葉樹)
針葉樹にはヒノキ・アカマツ・スギなどがあり、一般に葉が細く硬い針状をしていますが、扇形の葉のイチョウは針葉樹を同じ植物に属していて、材質も類似しているので、針葉樹の一つとしています。材としてはパルプ・建築用などに広く利用され、森林資源の最も重要なものです。

(水性ステイン)
水性ステインは素地着色に用います。溶媒が水なので素地を膨潤させたり、けば立ちを生じさせ、乾燥に時間が掛かるなどの欠点がありますが、エステル類の有機溶剤系塗料を塗布してもブリードが生じにくいです。けば立ちを防ぐためにはウォッシュコートサンディングやウェットサンディングなどにより十分な素地の研磨を行います。染料は60℃~80℃で溶かして使用しますが、複数の染料を混合する場合、直接染料と酸性染料との混合は出来ますが、塩基性染料に直接染料又は酸性染料を混合すると分離してもとの染料より溶けにくくなります。調色に当たってはあらかじめ赤・黄・橙・黒などの基本色の水溶液を準備しておき、適宜希釈したり混合して調色すると目的の色が出し易くなります。木材組織の粗密、素地の荒さ、塗り方で着色むらが生じる事がありますが、メタノールを10%~15%程度加えると着色剤の拡散が良くなり、むらが生じにくくなります。

(水分)
木材の加工や接着・塗装を行う上で、木材に含まれている水分量は大きな影響を与えます。生材や乾燥が不十分な木材を加工すると、後に接合部分などに狂いが生じたり、接着や塗膜の付着障害を起こします。生材に含まれている水分量は樹種・心材・辺材・幹の位置・生育環境・季節によってかなり変化しますが、一般に辺材は心材より多いです。これは心材では細胞が全て死滅し、生理的機能や水分通道機能が失われているからです。

木材中に含まれる水分は自由水と結合水の2つに大別して考えられます。自由水は細胞内腔や細胞と細胞の間にある水分で、蒸発・移動は容易です。一方、結合水は細胞壁内に含まれている水分です。結合水をなくすには相当のエネルギーを必要とし、通常は乾燥室などに入れて使用目的に応じた含水率に調整します。

(水分通導機能)
根で吸収した水分を葉に送る木部の機能で、針葉樹では仮道管、広葉樹では道管が受け持ちます。

(スチールウール)
スチールウールはマンガン鋼を繊維状にした研磨材で、繊維状になった1本の太さにより番手表示がされています。曲面の研磨や塗膜のつや消しに使います。研磨は片手で握れる程度の大きさに巻き、スチールウールの繊維方向と木目を直交させ、木目と平行に行います。塗膜のつや消しの際は、強く研磨すると研ぎ足が乱れるので、撫でるように軽く行います。

番手0000 塗膜のつや消し
番手000 塗膜のつや消し
番手00 塗膜のつや消し
番手0 素地研磨
番手1 素地研磨
番手2 素地の荒研磨、塗膜剥離
番手3 素地の荒研磨、塗膜剥離

(スプレーガン)
スプレーガンは塗料を霧状にして均一に吹付けるための道具で「混合方式」「塗料混合方式」に分類されます。スプレーガンを選択する時は塗装する物の大きさ、使用する塗料の量、塗装段階と塗料粘度などを基準に選ぶと良いでしょう。

(生材状態)
細胞内に多くの水分が存在する立木または切り倒した直後の状態を言います。

(脆心材)
「ぜいしん材」と読み、南洋材のうち丸太の中心部が脆いもので、簡単に折れる木材を言います。板材には「もめ」のキズが多く衝撃に対する強さが極端に低いのが特徴です。

(セミオープンポア仕上げ)
セミオープンポア仕上げは塗膜による素地の保護と木質感を生かした仕上げで、道管を塗料や目止め剤で完全に埋めない仕上げです。使用する塗料はニトロセルロースラッカー、ポリウレタン樹脂塗料、酸硬化アミノアルキド樹脂塗料などで、中塗りにサンディングシ―ラ―を使うことにより塗膜をやや厚く付けます。この仕上げは環孔材に向いていて、散孔材ではクローズポア仕上げに近くなります。道管をどの程度埋めて仕上げるかは、使用目的・道管の凹凸をどのように表現するかで決定します。道管径の大きさにより塗料の塗布量、目止め量が異なります。

(セラックニス)
アルコール以外の溶剤に溶けず、上塗り塗料の吸い込みを抑えます。ヤニ止め効果がよい半面、耐候性、耐熱性、耐水性、透明性に欠けます。使用に際しては厚塗りを避けます。セラックニスはラック貝殻虫の樹脂状分泌物を精製したもの ( セラック ) をアルコールに溶解したもので、淡黄色又は橙赤色の塗料です。セラックを漂白してアルコールに溶解したものを白セラックといいます。セラックニスは油性ステインや万能ステインの色押さえに用いられます。但し、油性ステインが乾かないうちに塗布すると白ボケや密着不良の原因になります。セラックニスはアルコール系溶剤には溶解しますが、ラッカー系の溶剤には溶解しにくいので、ニトロセルロースラッカーなどの下塗りに用い、上塗り塗料の吸い込みを防止します。その他、節止め・ヤニ止めとしても使用されます。

溶剤が揮発して塗膜となるラッカー形の塗料であり、速乾性で粘着性がないことから、建築現場では多用されます。しかし、耐水性・耐熱性・耐薬品性に欠け、肉持ちが悪いのでテーブルなどの塗装には向きません。塗装はスプレーやハケで行いますが、湿気が多い時は塗膜が白化( ブラッシング ) することがあるので、沸点が高いブタノールを加えて乾燥を遅らせます。ハケ塗りの場合、最後にタンポずりで仕上げることもあります。 アコギ塗装には最初からタンポを用いて塗り重ねます。

(セルロース)
木材の最も重要な化学成分で自然界にもっとも多く存在する有機化合物。植物中で二酸化炭素と水から光合成によって作られていて、。繊維素とも言います。

(繊維飽和点)
木材が水分で完全に飽和されている飽水状態の木材を乾燥すると、最初に自由水が蒸発し、次に結合水が蒸発します。その過程で自由水を全く含まず、細胞壁が結合水で飽和されている状態を繊維飽和水といいます。繊維飽和点の含水率は樹種に関係なく25~30%の間にあるとされ、普通28%又は30%の値を用います。繊維飽和点以下になると木材は収縮し始めることと、気乾状態の含水率が繊維飽和点以下の含水率であることから、繊維飽和点は木材乾燥の立場から重要な意味を持っています。

(染料系着色剤)
染料には酸性、塩基性、直接、油性、金属錯塩染料があり、これらを水又は有機溶剤に溶解して着色剤とします。染料系着色剤は透明度が高く素地への浸透性も良いですが、顔料系と比べると光により退色しやすいです。

(層間付着性)
塗料を塗り重ねた時の付着性は、下塗り塗料の硬化条件 ( 温度、湿度、通風、時間 ) や研磨の有無などによって大きく変わってきます。2液形ポリウレタン樹脂塗料を下塗りとして各種塗料を上塗りした時、下塗り塗料の硬化条件の差異が層間付着性に及ぼす影響があります。付着可能日数を超えた下塗り塗膜であっても、研磨した新しい活性表面の上には多くの場合付着性が良好になります。

(早材)
針葉樹で春に作られる年輪の内側の軽く軟らかい部分。春材とも言います。

(素材の欠陥)
木工塗装の被塗物はムクの木材の他に合板、集成材、ファイバーボード、パーティクルボードなどの木質系材料があります。これらの被塗物に起因する塗装欠陥は乾燥不良・塗膜割れ・乾燥障害・着色むらなどです。その原因は高含水率・やに・各種のキズや変色・汚染などです。

① 日本では塗装に適する素材の含水率は10~15%とされています。天然乾燥だけでは適正含水率まで達しないので、人工乾燥を行います。
② ヤニについては樹種によってヤニを多く含むものがあります。ヤニが素地面ににじみ出ているものは溶剤で拭き取り、又、内部からさらに出てきそうな場合は加熱し強制的に除去します。ローズウッド、パープルウッド、エボニー、チークなどはワックス形ポリエステル樹脂塗料の硬化を阻害するヤニが含まれているので、ヤニ止め効果のあるウレタンシーラーを2~3回塗ります。

(素地欠点修正)
① 打ちキズ
木材素地のうちキズは温水又は水で濡らした布を当て、アイロンを掛けて加熱してふくらませます。この方法で膨らまなければ埋め木をします。合板の場合、小さなキズは研磨紙による研磨でもよいですが、深いキズは埋め木又はパテで埋めます。
② 割れ、虫くい、ふし穴
大きい割れはできる限り同種の材で埋め木をしますが、複雑な形状のものや小さいものには、パテや同一材の研磨粉を接着剤で練って充填します。虫くい・ふし穴は不良箇所を切り取り埋め木します。>
③ 接着剤の残留
接着剤の残留は水又は湯引きを行うと見つけやすくなります。接着剤は研磨紙だけでは容易に取り除くことができないので、スクレーパーやノミなどで削り取り、その後研磨紙で荒く研磨し、次に180から320番の研磨紙で十分に研磨します。
④ 油、やになどの付着
アセトン、ラッカーシンナー、テレピン油などでふき取ります。樹種によってはヤニを多く含むものがあり、ヤニ止め効果のあるポリウレタンシ―ラ―を2~3回塗ります。
⑤ 接合部の隙間
隙間には注射器等で接着剤を入れ、クランプなでで接合します。接合出来ない時は埋め木やパテを充填します。

(素地研磨)
素地研磨は研磨紙・布を使い、次の目的のために行います。
① 素地のきず、汚れなどを除き、平滑性を作る事
② 塗料の吸収を均一にして付着性を良くすること

研磨の方法には手研磨と機械研磨があり、繊維方向と平行に研磨します。特に透明塗装では、繊維方向に直角や斜めに研磨した研磨痕が、目止めや着色により目立ってきて仕上がり外観を大きく損ないます。曲面・木端などの狭い部分などは手研磨で行うことが多いです。手研磨では平滑な面を得るため当て板を用いて行いますが、当て板の堅さにより研磨性が異なるので、目的に応じた当て板の選択が必要です。電動サンダーなど研磨用機械のうち、円軌道又は楕円軌道を描いて研ぐ研磨機を使った場合、素地面に細かい研ぎ足が生じることがあるので注意します。道管に残った研磨粉はピンホールや目止め不良の原因となるので、ダスターばけ・エアガンなどを用いてよく取り除きます。

素地面のけば立ちは着色むらや木目不鮮明の原因になるので、次の方法により研磨します。

① ウェットサンディング
水、温湯、アルコールを塗布してけばを起こし研磨します
② グルーサンディング
希釈したにかわなどの接着剤を薄く塗布し、けばを起こした後固めて研磨します
③ ウォッシュコートサンディング
希釈した下塗り塗料(ポリウレタンウッドシーラーなど)を薄く塗布し、けばを起こした後固めて研磨します。

(素地調整)
素地調整は塗装前の処理作業で、素地面を塗装に適した状態にする行程です。素地の良否が塗装の仕上がりに直接影響することから、この行程は非常に重要です。適切な素地面への塗装では、作業中のトラブルが極端に減ります。例えば素地面への油、汚れの付着は塗料のはじき、付着障害等を起こし、素地面の凹凸は鏡面仕上げの際に目立つ欠点となります。これらの素地不良によるトラブルを防ぐため、素地面の状態を点検し、塗装作業に支障のないよう平滑面をつくり、うちキズの修正や汚れの除去などの作業を行います。

(速乾ニス)
速乾ニスはコ―バルやロジンをアルコールに溶解して塗料化したもので、塗膜性能はセラックニスより劣ります。漂白セラックニスの安価な代用品として建具、小木工品の一部に使用されます。